歌集が出ます
こんにちは、土岐友浩です。
今年の夏は、祇園祭、甲子園、花火大会など、多くのイベントが数年ぶりに完全復活となりました。
喉元過ぎればなんとやら、と言いますが、大変だったときの記憶ほど、むしろ僕たちは積極的に忘れていくのかもしれません。
しかし、なにもかも忘れてしまえば、振り返ることもできなくなります。
2021年の夏、僕は「ねむらない樹」に「ナムタル」という短歌連作20首を発表しました。毎日のニュースで感染者数 (とオリンピック関連のあれこれ)が報じられたあの日々を、どう詠めばいいのか、長く悩んでいたのですが、はじめて、わずかなりにも手応えがつかめた作品でした。
その後「短歌研究」に「コロニラ」30首を発表しました。タイトルはポール・ヴァレリーの晩年の詩集から取っています。思いがけないことに、穂村弘氏が季評で本作を取り上げ、一定の評価をしてくださいました。幸運でした。
このそれぞれ思い入れのある作品を、忘れる前に形にしておきたいというのが、今回歌集をまとめることにした大きな動機です。
ナムタルは、疫病をもたらす神様の名前です。たまたま読んだ中島敦の小説に、その名前だけが出てきました。
一度、勉強のために『古代メソポタミアの神々』という本を取り寄せたのですが、載っていませんでした。なので僕のなかではいまだに詳細不明な神様です。が、それでもいいか……、と思っています。
歌集は私家版で、本文の編集と校正を僕一人でやりました。
なぜ私家版かという話は、別の機会に書くつもりです。
装画は古井フラ氏に依頼しました。
古井氏とは、以前に満島せしん氏の歌集の栞文を書いたご縁で知り合いました。古井氏の詩画集『変身物語』を読んで、歌集の装画はこの方しかいないと確信し、メールを送ったのが昨年の十月のことです。
それから約一年。
描き下ろしていただいた装画を、できるだけ、魂を売ってでも、美しく「本」にしたいと思い、京都の印刷会社サンエムカラーさまに表紙印刷をお願いしました。製本は、僕が学生時代からたびたびお世話になっている創栄図書印刷さまに頼みました。
私家版歌集ではありますが、みなさまの力を得て、もう少しで完成します。
9月10日の文学フリマ大阪で個人ブースをもうけました。BOOTH通販や書店委託、刊行記念のトークイベントなども予定してします。この歌集が、たくさんの読者と出会えることを祈っています。
【書誌情報】
仕様:四六版/並製本/160頁
本体 2,000円+税
刊行:2023年9月上旬予定
(BOOTH通販、即売会等で頒布予定)
印刷:表紙印刷 サンエムカラー
本文印刷・製本 創栄図書印刷